継続地代の実態調べ(平成18年における調査結果)
普通借地権の地代水準について
提 供 日税不動産鑑定士会
日税不動産鑑定士会は、税理士と不動産鑑定士との2つの資格を持った専門家を中心とする士の会で、昭和46年に結成されました。社団法人日本不動産鑑定協会所属メンバーによる任意団体で、長年にわたり税務・不動産鑑定の研究を行っています。
その研究グループの調査によると、平成18年における調査結果は次のとおりです。
・ 調査範囲 東京23区内
・ 平成18年1月1日現在において授受されている地代
・ 地代の収集事例数 727件
(1)東京23区内地代の水準
用 途 別 | 平成18年1月1日現在 | (備考)平成15年1月1日現在 | |
住 宅 用 地 | 1,123円 / 3.3 m2 | 1,135円 / 3.3 m2 | |
非住宅用地 (商業地・商住併用を含む) | 普通 | 2,064円 / 3.3 m2 | 1,987円 / 3.3 m2 |
高度 | 13,853円 / 3.3 m2 | 12,482円 / 3.3 m2 |
この表は、東京都23区内の地代収集事例を単に算術平均したものですが、この表で理解されるように、住宅用地の地代が概ねほぼ横這いで推移しているのに対し、非住宅用地(商業地)の地代は若干上昇傾向にあることが伺えます。
なお、非住宅用地(商業地)の地代の若干の上昇原因には、収集した事例は横這いのものが多いものの、今回特に銀座等のもともと高額な地代事例も多く収集されたことが多少影響しているものと思われます。
(2)地価(更地価格)に対する支払地代年額の割合(「活用利子率」と呼ぶ)
用 途 別 | 平成18年1月1日現在 平均的活用利子率 | (備考)平成15年1月1日現在 平均的活用利子率 |
住 宅 用 地 | 8.3 / 1,000(0.83%) | 8.0 / 1,000 (0.80%) |
非住宅用地 (商業地・商住併用を含む) | 14.1 / 1,000(1.41%) | 13.5 / 1,000 (1.35%) |
この表で理解されることは、東京23区において、最近の地価が漸く下げとまり、上昇気運にあるとはいえ、平成15年頃までの地価は未だ下落傾向にあったことから、その地価の下落は地代に殆ど影響せず、横這い傾向の推移であったためと思われる。
すなわち、地代は地価が下落する中でもその相関関係を打ち消して直接的には地価には左右されていない実態といえる。
(3) 地代の公租公課に対する倍率(支払地代年額 /公租公課)
用 途 別 | 平成18年度 公租公倍率 | 備 考 |
住 宅 用 地 | 4.1倍 | 平成7年度第48号東京民事調停協会連合会発行資料によれば、住宅用地の公租公課の倍率は概ね3.1倍前後、非住宅用地(商業地)のそれは2.4倍前後であった。 |
非住宅用地 (商業地・商住併用を含む) | 4.1倍 |
前回の平成15年1月1日現在の調査で住宅地が4.1倍、非住宅用地では3.7倍あることから、住宅地が前回とほぼ同程度の倍率にあるのに対し非住宅用地は倍率が若干上昇しています。
住宅地については、固定資産税等が課税標準額の特例措置や高負担措置の継続により、この間、若干の地価の変動に関わりなく概ね据え置かれ、一方で地代も横這いのケースが多かったことから、ほぼ公租公課の倍率も同じような結果になったとものと思われるます。
また非住宅用地(商業地・商住併用を含む)では、高負担感のある商業地については負担水準が引き下げられた等の措置、さらには中小企業者の支援として減免措置が行われたこと等から、地価が横這い乃至上昇傾向になったものの固定資産税等の公租公課は、この間(15年度から17年度)は大方の地域で引き下げられたが、地代は一部の商業地を除いては殆ど横這いであったため、地代と公租公課に対する倍率は上昇する結果になったものと思われる。
なお、従来の倍率が住宅用地で概ね3.1倍前後、非住宅用地で概ね2.4倍前後であったことは、東京簡裁等の調停成立事例からこれを証することができます。
(4)東京都特別区の固定資産税課税の推移
年度別 | 非住宅用地(商業地等) 課税標準額 | 対前変動率 | 住 宅 用 地 課税標準額 | 対前変動率 |
平成10年度 | 323,022円 / m2 | △1.2% | 40,677円 / m2 | △0.6% |
平成11年度 | 320,292円 / m2 | △0.8% | 40,437円 / m2 | △0.6% |
平成12年度 | 302,799円 / m2 | △5.5% | 40,057円 / m2 | △0.9% |
平成13年度 | 296,820円 / m2 | △2.0% | 39,830円 / m2 | △0.6% |
平成14年度 | 280,495円 / m2 | △5.5% | 39,590円 / m2 | △0.6% |
平成15年度 | 277,674円 / m2 | △1.0% | 39,547円 / m2 | △0.1% |
平成16年度 | 279,144円 / m2 | 0.5% | 39,571円 / m2 | 0.1% |
平成17年度 | 279,842円 / m2 | 0.3% | 39,620円 / m2 | 0.1% |
資料:東京都主税局「固定資産概要調書」(東京都特別区)に基づく |
この表で理解されることは、住宅用地及び非住宅用地(商業地)の固定資産税は上昇傾向にあることです。
以上、主な調査結果です。
ところで、地価と地代との間には相関関係があると言われていますが、現実には地代は地価には追随していません。 地代はその土地の公租公課に追随して推移するとされています。しかし、公租公課も行政的要因によって増徴されたり、減額されたりしますので、その関係も直接的には維持されなくなってきているといえます。
なお、上記の地代水準を見ると、概ね定期借地権にかかる地代の半分位の水準にあたっていると思われますが・・・。 何かの参考にはれば幸いです。
(文責 横須賀 博)