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平成11年10月27日判決、東京高裁第9民事部・平成10年(ネ)第5145号 建物賃料改定請求控訴事件(原審,東京地裁・平成7年(ワ)第18614号)に係る判決文の一部を抜粋
上記にかかるサブリース賃料の改定請求控訴事件の判決文の中で、事業受託方式について次の様に述べられている。
「事業受託方式は、ディベロッパーが、バブル期に賃貸ビルの需要が急増していた状態のもとで、当時異常な高値となっていた土地に直接資本投下することなく、ビルの供給が可能となり、賃貸ビル事業の営業面積を増やし、ビル転貸事業を拡大することができる点で、ディベロッパーにとって有利な賃貸ビル供給方法であり、他方で、地価高騰による相続税評価額の急上昇やオフィス需要急増に伴う賃料の大幅上昇をきっかけとして、所有地に賃貸ビルを建てて有効活用したいとのニーズを有しているものの、そのニーズを実現するノウハウを有しない地権者に対し、信頼できる不動産会社等にビルを一括賃貸し、賃料は若干低額となるもの、収益の保証を受けることによりビル賃貸事業のリスクを回避することができる方法を提供する点で、地権者にとっても有利な賃貸方法であり、共同事業者の双方にメリットのあるビル賃貸事業の形態として注目されていた」と。
そして、争点の相当賃料の額について、鑑定人横須賀博の鑑定結果について次の様に判示されている。
「鑑定の結果によれば、本件建物部分の賃料相当額は、平成7年3月1日時点で、月額1億192万4千円(年額12億2,308万8千円)、平成8年8月1日の時点で月額8,995万3千円(年額10億7,943万6千円)とされている。
鑑定は、本件契約書に基づき本件契約内容を転貸条件付一括賃貸借契約(サブリース契約)であると確定し、本件ビルについて建物設計図面等の書面審査及び現地調査をしてその位置・形状・用途・数量等の物的確認をしたうえ、敷金234億円についての運用利回りを2.5%とし、差額配分法、利回り法、スライド法及び賃貸事例比較法を用いて継続適正実質賃料を求め、その中から敷金の運用益相当額を控除して本件建物部分の継続適正支払賃料を求めている。その際、本件ビルと比較対象する賃貸事例として、港区芝浦及び同区港南の大規模オフィスビル4棟を選択しており、その手法に不当な点は見当らない。したがって、本件建物部分の相当賃料は、鑑定の結果を基準として算定するのが相当である。
控訴人は、鑑定の結果について、実質賃料を計算する際、被控訴人自己使用部分について運用益を計上しなかった点、敷金の運用益を計算する際の利率がプライムレートによっていない点、本件建物部分引渡前に敷金を預託していることを考慮していない点で相当でないので、これらを考慮して修正されるべきである旨主張する。しかし、鑑定人は、敷金の運用益を算定する際、敷金の交付が被控訴人に本件ビルの建築を決断させる意味合いがあることを認め、これを前提として、対象物件配分率を定めているのであって、被控訴人自己使用部分の運用益を無視しているわけではなく、本件契約が事業受託方式であり、単なるオフィスビルの賃貸借とは異なった側面があることを考慮すると、このような処理も、必ずしも是認できないわけではない。また、鑑定では、敷金の運用益を算定するにあたってプライムレートによっていないけれども、敷金は、全額本件ビルの建築資金として使用されているものであり、被控訴人において現実にこれを運用し得たものではなく、観念的なものに過ぎないうえ、平成7年3月以降の銀行の定期預金の金利が2.5%にも達していなかったことを考慮すると、倉庫業を営む被控訴人について、敷金の運用益を2.5%として計算することを不当ということはできない。さらに、本件建物部分引渡前の敷金運用益については、開発期間中の金利を控訴人が負担することが予定されていたうえ、敷金の授受が遅滞したため、被控訴人においてその対応に当たらなければならなかったことなどの事実があるから、これを賃料相当額の算定において考慮しなくとも、不当とはいえない。そして、他に、鑑定の結果が不当であるとする証拠はない。」
とされている。
以上
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